カルシウムパラドックス

「骨粗鬆症はカルシウム不足が原因」というのは、だれもが納得できることですが、「高血圧や糖尿病、さらには認知症や酸化ストレスが引き起こす、様々な生活習慣病もカルシウム不足が関わっている」というと、皆さんは「エッ?」「どうして!」と思われるでしょう。高齢化社会でますます深刻化する生活習慣病は、いずれも「カルシウム欠乏症」という根っこと大きな関係があるのです。この驚くべき事実を、これからご説明しましょう。

カルシウムといえば、私たち動物の骨や歯などを形成するうえで欠かせない栄養素のひとつなので、カルシウムが足りなければ骨が弱く脆くなることはよく知られています。

しかし、カルシウムには生命そのものと直結した大切な働き、すなわち心臓や脳を動かすための情報伝達機能という、何ものにも代えることができない重要な働きがあります。血液中からカルシウムが無くなると、心臓は停止してしまいます。ですから、生命維持の働きで血液中のカルシウムが減少したときは、直ちに骨を溶かして血液にカルシウムが補われる仕組みになっているのです。カルシウムがこのような大きな役割を担っているために、カルシウム不足が慢性化すると、骨がスカスカになるばかりでなく、今度は逆に骨以外の全身でカルシウムの過剰が起こり、これが、さまざまな病気というかたちで、私たちに襲いかかってくるのです。これをカルシウムパラドックスと言います。「認知症」も「骨粗鬆症」もそのあらわれなのです。