
お薬が原因で便秘を引き起こすこともあります。薬剤性便秘と言います。前項で自律神経の話をしました。活動的な状態の時に作用する交感神経と、一方で身体がリラックスしているときに作用するのが副交感神経です。そして交感神経が働くときにはアドレナリン、副交感神経が働くときはアセチルコリンというホルモンが分泌されます。
お薬のなかには、アセチルコリンの分泌を抑制する抗コリン成分を含むものが多くあります。アセチルコリンの分泌が抑制されると副交感神経の働きが弱まり、腸の蠕動運動が弱まりスムーズな排便が行われにくくなります。それは身体をリラックス状態から活動・緊張状態に向かわせる作用の現れでもあります。身体が緊張状態になると、トイレに行きたいという気持ちも薄れたり、鼻水も出にくくなります。緊張状態になるので身体から水分放出が抑える、というのが抗コリン作用です。この仕掛けを利用した薬剤が、抗コリン作用薬剤です。
市販薬では、鼻水を抑えるために総合感冒薬(風邪薬)に含まれています。そのほか、花粉症などのアレルギー緩和のために用いられる抗ヒスタミン薬、酔い止め薬にも抗コリン成分が含まれています。
また、抗精神病薬や抗パーキンソン薬、抗うつ薬、酔い止め薬、睡眠薬、麻酔薬なども便秘しやすい薬剤です。