酸化マグネシウムについて

1. 日本最初の西洋薬のひとつ

非刺激性便秘薬のなかで、近年、注目されているのが酸化マグネシウムを主成分とした便秘薬です。カマまたはカマグとも呼ばれ、調剤薬局での処方箋薬として使用されてきました。かつては粉末製剤でオブラートに包んで服用するのが主流でしたが、錠剤化されたことにより手軽な服用が可能になり、現在ではドラッグストアの棚にも数多くの種類が並ぶようになりました。
酸化マグネシウムの日本での歴史は古く、幕末期に最初に輸入された西洋薬リストにも記載されており、長い間、日本人には慣れ親しんだ製剤とも言えます。

2. 水を集めるからおなかに優しい

酸化マグネシウムの便秘薬としての特徴は、おなかに優しいということ。刺激成分を含まないので腸を刺激することもなく、おなかが痛くなりにくい。酸化マグネシウムが腸内で浸透圧を利用して、腸に水分を集めることで排便を促すのが、酸化マグネシウムの作用です。
水分は人間にとって必須のものです。口から摂った水分は消化管を通過しながら消化管の外側(実は体の内部)に染み込み、生命維持の重要な働きをいたるところで行います。したがって大腸はとても水分が逃げやすく、乾燥しやすい状態にあります。大腸に水分が不足すると、便はコチコチになり便秘を引き起こします。
「便秘は腸の水不足」、といわれるように腸の水分不足は、良好な排便環境にとって大きなマイナス条件になります。

3. 吸収されにくいお薬

酸化マグネシウム製剤は、他の薬剤(便秘薬・胃腸薬・風邪薬に限らず)とは、その働き方、つまり作用機序が大きく異なります。一言でいえば、吸収されないで効き目を発揮する薬ということです。食べ物を摂取する口から食道、胃、小腸、大腸、肛門は、消化管と言い、1本の管で繋がっています。その意味で、食べものが通る消化管のなか側それ自体は、カラダの外側にあることになります。栄養素や薬剤は消化管を通過する際に、特に小腸において徐々に消化管の外側、すなわちカラダの内部に吸収されていきます。熱や痛みを和らげる解熱鎮痛成分や、菌と戦う抗菌成分などほとんどの薬剤は体内に吸収されて、薬剤としての働きをします。
それに対して、酸化マグネシウムは、腸内でマグネシウムイオンになっても、栄養素として僅かな分量以外はほとんどカラダに吸収されません。大便の材料となる食べ物の残り滓と一緒に大腸に運ばれ、そこで水を集めるという働きをします。このように吸収されないで、薬剤としての働きを行うという、大変珍しい薬剤が酸化マグネシウム製剤の大きな特徴です。

4. 酸化マグネシウム、吸収されない、母乳に移行しない

酸化マグネシウムは、このように吸収されない薬剤であることから、いくつかのメリットがあります。吸収される薬剤は、最終的には肝臓での代謝・分解を経て体の外に排泄されますが、その過程がないので体に負担をかけることはありません。吸収されないので、母乳に移行することもない。刺激性便秘薬の成分であるセンナ、センノシド、ダイオウ、アロエ等は母乳への移行があるので、授乳中は注意が必要とされています。
このように酸化マグネシウムは、おなかに優しい優れた便秘薬であることから、近年注目を集めているのです。