
「たかが便秘」と甘くみていると、大腸の中で滞留したままの便がますます硬くなり、症状が余計ひどくなる「便秘の悪循環」が生じてしまいます。さらには次のような「便秘の合併症」とも言える弊害が生じてきます。
- 痔
便秘のために便が硬くなると排便時に肛門を傷付けやすくなります。また、いきみによりいぼ痔も大きくなり、排便時に出血します。肛門の痛みや出血のおそれのために便意をがまんしていると、便がさらに硬くなり、状態はますます悪化してしまいます。
- 脱肛、直腸粘膜脱
便が硬くて排便時にいきむこと で痔 核の血管が膨れ、痔核が次第に肛門の外に出てきます(脱肛)。これが繰り返されると、直腸の粘膜も一緒に肛門外へスライドしてきます(直腸粘膜脱)。糞便塞栓症便が直腸内に溜まって固まり、指や器具でかき出さなければならない状態です。このとき、直腸の粘膜と便のわずかな隙間から液状の便が漏れてきて、下痢と間違われることがあります。
- 大腸の潰瘍・穿孔、腹膜炎
大腸内に便が滞っていると、潰瘍ができたり、まれには穴があいて(穿孔)、そこからおなかの中に便の細菌が広がり、腹膜炎になることがあります。
- その他
便秘と肌荒れが関係していることは多くの 女性が実感されているのではないかと思います。高齢者の場合、認知機能障害(認知症)のような症状が便秘のために現れる ことも少なくありません。これらは、大腸のバリア機能(便中の腐敗物質や細菌な どが体内に侵入するのを防ぐ機能)が、便秘のために破綻する結果と考えられます。
痛みをおそれて排便を我慢するようになると、便秘はますますひどくなり、硬い便によってまた切れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。切れ痔が慢性化すると、皮膚の突起物(見張りイボ)やポリープができたり、肛門が狭くなる「肛門狭窄」という状態になったりすることもあり、そうなると便はさらに出にくくなります。肛門狭窄になると手術が必要になるため、早めに適切な治療を受けることが大切です。切れ痔を治すことも大切ですが、切れ痔の原因となる便秘を改善することがもっとも重要です。