排便のしくみ

消化されなかった食べ物や塩分、水分、腸内細菌の死骸、腸の粘膜の細胞がまとまって排出されるもの、それが便です。

人間は社会生活を営むために、排便のタイミングを極めて高度にコントロールしていると言えます。便の垂れ流し状態では、社会は成り立ちません。どのようなコントロールを行い排便を行っているのか、簡単に説明します。

1. 消化管の旅

食物は、口で咀嚼されてから食道→胃→小腸へと次第におりて行き、そのカスが便となって、最後は大腸→直腸→肛門を経て排便されます。口から肛門までの1つのつながった器官を総称して消化管と言います。ちなみに消化管ではさまざまな部位で消化液が分泌され、消化・吸収の手助けを行っています。

食物の栄養物は消化液によって、ドロドロの液体となり、主に小腸で体内に吸収されます。ここで吸収されなかったカスが、大腸を進む中で水分が吸い取られ固まって行きます。正常な場合は、前日に食物のカスが便となって翌日、大腸の後半部分である下行結腸にたどり着きます。このスピードが遅いと、水分が吸い取られすぎて便が硬くなり、便秘を引き起こします。逆にこのスピードが速いのが下痢です。

2. 大切な胃結腸反応

便は下行結腸にまでたどり着きました。排便まではもうすぐです。ここまで来た便が無事排泄されるためには、自律神経の様々な働きが作用しています。睡眠から目覚めたあと、朝食を摂ったり冷たい水を飲むことで胃が刺激されると、強い電気が発生しそれが大脳→脊髄を経由して腰部→骨盤内神経へと刺激を伝え、そこで下行結腸を収縮させ便を一気に直腸まで進めて行きます。この一連の動きを胃結腸反応と言います。なお、高齢者においてはこれら自律神経の働きおよび胃結腸反応が鈍化し、直腸まで便が到達しにくくなることも、多々あります。

3. 来たゾ!便意

直腸に便がたどり着くと、再び自律神経の働きで、今度は逆のルート、すなわち直腸→骨盤内神経→脊髄→大脳にまで刺激が伝わり、それが便意となるわけです。そこで便をする状況にあるとき、トイレに行き息むと脳から肛門の内側の筋肉を開く指令が出て、めでたく排便が行われます。しかし、トイレにいない場合など、便をする状態でないときには、肛門の外側の筋肉を使って排便を我慢します。そして、トイレに入り排便ができる体制になったときに、はじめて肛門の外側の筋肉をゆるめる指令が脳から出て、同時におなかに力を入れる指令が起こるのです。健康的な成人であれば、こうした調節は正常に行われますが、子供や自律神経の働きが弱った高齢者などは上手く調節が出来ない場合もあり、些細なことがきっかけで排便が困難になりり、それが便秘の原因となります。

4. 逃がすな!15分間のチャンス!

「来たな!便意!!!」。便意を感じている時間は5~15分程度と言われています。それを過ぎると便意は次第に薄れてゆき、いつの間にか無くなってしまいます。しばらくすると、再び便意を感じ、それもまた暫くすると・・・。便意にはこうした波があることは、感覚的な経験でおわかりかと思います。しかしこの便意を我慢し続けていると、徐々に自律神経の働きが鈍り、直腸からの信号をキャッチすることが困難になり、便秘を引き起こす原因になります。

便意を我慢することは、正常な排便習慣にとっては大きなマイナスとなります。
また、一般的に男性よりも女性の方が便秘になりやすいのは、社会生活において女性の方が便意を我慢することが多いためではないか?とも言われています。

睡眠から目覚めた朝は、身体の至る所にスイッチが入るとき。便意もこの時に併せてもよおしやすくなります。このタイミングを逃がさない手はありません。